最初から完璧に作成しようと考えない
エンディングノートを書いておいたほうがよいのは言わずもがな、ですが、人は自分に都合のよいように考えます。私などは、先に亡くなるのは、私よりも不摂生をしている夫のほうだと、漠然と思っています。
ですが、新型コロナ感染拡大のパンデミック下では、私は、夫より”あと”とはかぎられないと感じさせられました。
新型コロナ感染により、タレントの志村けんさんや女優の岡江久美子さんが、急逝されました。
岡江さんの場合、発症から3週間で亡くなられたということです。病室では家族に会うこともかなわなかったようです。
岡江さんが司会をつとめられていた朝のテレビ「はなまるマーケット」に、私は40代の頃に3回出させていただきました。自分と同世代の方であり、妻、母親、主婦であったということもあり、勝手にワタシを重ね合わせ、死去の報道には衝撃を受けました。
ご家族に伝えておきたかったことは、たくさんあったことと思います。さぞ心残りだったでしょう。
わが家では、お金の管理は私が一切合切、行っています。皆さんのご家庭はどうでしょうか。私のお金は私のもの、夫のお金も私のもの、ぐらいの気持ちで管理しております。
そんな私が、急に重篤で話すこともできない状態にいきなりなってしまったら、家族はどうするか。
何の準備もできず、家族に伝えることもできないまま、人生を終えることになってしまったら。
そんなことを考えたときに、いま、書きだして家族にわかるようにしておかなければと、青くなりました。
それで、今回の提案です。
思い立ったときこそ、家族に残したいお金の「伝言」のすすめです。
書いておく必要を痛感したとき、書きたいと思ったとき、思いの高まりを大事にして、必要度の高いこと、重要度の高いことから、少しずつ書いていくことを、ファイナンシャル・プランナーとしてもおすすめします。
市販の立派なエンディングノートである必要はありません。
むしろ、手軽に書き始められるノートでよいです。
もっとよいのは、パソコンのワープロ機能などで書くこと。ちょこちょこと加筆したり、修正できるからです。エンディングノートを書くような気の重さが軽くなります。
タブレットやスマホでもよいですが、紙にプリントアウトすることが重要です。スマホの中にあっても、家族は見ることが困難な場合が多いです。
スマホにアプリを入れれば、プリントは可能です。プリンターは安いものでよいので、スマホと連携できるプリンターを自宅に持っておいてください。
伝えたいことは2つに分けて、急ぐことからとりかかる
自分が急死するようなあっとき、家族や関わりがあった人を思い浮かべ、残したいことには、大きく分けてしまえば、2つにわけられるのではないかと思います。
家族や友人への「思い」と、家族の以後の生活の支障をできるだけ少なくするための「伝言」です。
下にあげた4グループでは、★印は、「思い」の要素が高いです。
☆印は、伝えておくべき「伝言」の要素が高いことです。
伝言を、グループ分けし、「関わりのある人の思いにかかわること(☆印)」と「関わりのある人の生活や仕事に関わること、緊急性の高いこと(★印)」とわりふってみます。
- 家族や友人、仕事仲間への思いや感謝の言葉 ☆
- 残す資産の分け方の希望 ☆
- 残す資産の存在を知らせる ★
- 家族の生活を混乱させないための事務連絡 ★
どれも大事ですが、まず、書き始める必要を感じたのが、私の場合は、★印の「伝言」の項目です。
★は、伝えられなかった場合、残された人が生活に混乱が生じることです。
とくに、一家のお金の管理している人は、最優先項目です。
書いてしまえば、なあんだという項目ですが、もしも残された人に伝えられていなかったら、生活に大混乱が生じますので、まずはここから着手しましょう。
金融機関はここにあり。機関名と口座番号は必須
ネット銀行やネット証券を使っている人は、すぐに書き出しましょう。店舗のある金融機関のように残高明細や各種お知らせを、郵送では送ってきません。
たくさんの金額や価値の証券をもっていても、ネット銀行やネット証券では、知らせておかなければ、自分以外の人には存在していない資産になってしまいます。
実店舗がある金融機関でも、もう何十年も出入金のなかったような、いわば放置された口座は、通帳やキャッシュカードがなまじ残っていると、残された人は余計な手間を抱え込むことになりがちです。半日つぶして店舗に行って確認したら、100円たらずしか残高がなかった、なんてことがあります。わずかな金額だから、本人は放置していたのでしょうが、きちんと始末をしておきましょう。
解約するのが一番ですが、まずは、「この口座は無視してよい、廃棄」など書き記して、ひとまとめにしておけば、家族も悩まずに捨て去ることができます。時間ができたときに、解約手続きにいくとして、あとまわしでよいです。
口座が凍結されることを想定しておく
使っている口座でも、自分が死亡後は、凍結される事態を考え、ある程度の残高は常時おいておくことにします。
あるいは、総合口座にして、定期預金をしておき、普通預金の残高がなくなっても、定期のほうから自動融資で、支払い等が滞らないようにしておきます。
たとえば、自動引き落としになっている水道光熱費、クレジットカード利用の決済、光回線やプロバイダーや携帯電話や固定電話の支払いがある口座、凍結され、残高が不足すると、支払い催促の知らせが届き、家族が気がつかずにいると、インターネットにつながらなかったり、テレビや電話も使えず家族の生活に支障が出てきます。
口座ごとに、どのような自動引き落とし、支払いがあるか、メモしておきましょう。
クレジットカードごとの支払い内容を伝える
クレジットカードも同様です。
最近は、カードで定期的な支払いもしていることが多いでしょう。かつて銀行の自動引き落としで支払っていたものが、カード払いに移動しています。
これも銀行の返済口座が凍結されると、通知が次々とやってきて、家族を悩ませます。
使っているカードと番号、どのような支払いを定期的に行っていたのか、メモします。
すぐに解約しないほうが、家族の生活に支障が少ないこともあるので、解約はよく確認してからにしてもらいます。
web家計簿が「伝言」になる
こうしたサイトを見る人の中には、web家計簿を使っている人も多いと思います。私はマネーフォワードをフルに活用しています。
私は、もし私に何かがあったときには、マネーフォワードにアクセスするように書き記しています。
あらゆる金融機関、クレジットカードなど、登録をしていまして、日々残高など、自動で更新されています。
個人情報がもれると心配する人もいますが、私は不安をもっておらず、フルに使っています。
これがあると、資産の内容を事細かに書かずとも、IDとパスワードを記しておいてここにアクセスするよう伝言しておきます。口座番号なども記入しておけるので、これを見ればすぐにわかります。
本人が元気なのに、家族に資産を把握されるのがいやだと思う方もいると思いますが、そこは家族の性格や自分との関係性を考えて、判断してください。
ただし、難点は、金融機関側のメッセージなど開封していないと、最新残高が反映されないことがしばしばあるという点です。
こういう口座があるということを知らせるツールとしては、使えるアプリだと思います。
親の時代より数段、お金が見えない時代
自分の親のときのことを考えても、口座の確認には、手間と時間を要しました。そんな親の時代よりも、今はもっと口座は多く、第三者からは見えにくく、把握しにくい時代です。
だから、意志をもって伝言しなければ、家族が大いに困り、本人としても天国で静かに見守ってはいられないのではと思います。
自分が死んでしまったときのための伝言など、元気よく始めるということはしにくいです。岡江久美子さんや志村けんさんなど、テレビでしか会うことができない著名人の急逝の報道、そんな人たちだけでなく、身近な人に不幸がおきたことを知ったとき、ご本人の思い、ご家族や友人の気持ちに思いをめぐらしているはず。そんな思いがいつのまにか消えてしまう前に、自分のことに重ね合わせ、少しずつ伝言を残していければと思うのです。
コメント